合コンの帰り。
終わってもなお話しかけてくれる西高ガールズを振り払って、オレは柚子の隣で歩いていた。
「歌、うまくてびっくりした」
素直に感想を伝えたら、
「世辞はいらん」
全く素直じゃない答えが返ってきた。
その頬はかすかに赤く染まっている。
照れてるのかな。
「あれ、何の歌だったの?」
ずっと気になってたことを聞いてみる。
多分あの場にいた全員が思ってたはずだ。
「祖国は我らと共に。
旧ソ連の国歌だよ」
ふわり、柚子の口元が緩んだ。
「歌詞はイデオロギーでコテコテなんだが、曲自体は悪くないだろ?」
そう言って、目の前の少女はわずかにいたずらっぽい笑みを見せた。
ほんの少し。
少しだけ、心臓が跳ねた気がした。
いやいやいや。
なんかマニアックでアレな歌で喜んでる謎女だよ?
ときめきとか、ましてや恋なんて、ないない絶対ない。
まぁ、顔だけはほんとに可愛いんだけどさ。

