「いや、待て。
なぜここで弁当を広げる」
「え、だってオレたち友達じゃん」
弁当一緒に食うのも嫌なのか。
さすがにオレもヘコむよ。
「冗談じゃない。
読書の邪魔だ」
「なんだとー!
オレより本の方がいいワケ?」
「当然」
「ひどっ!
今のはさすがにひどくない!?
…てかさ。
いつも一生懸命何読んでんの?」
尋ねると、文学少女は机をゴソゴソ、本日の一冊を取り出した。
ん、と言って表紙を見せてくる。
「えーと、チェーザレボルジア、あるいは優雅なる冷酷…?」
「昔の賢いイタリア人の話だ」
「面白いの?」
「ああ」
柚子はちょっと目を伏せて、付け足した。
「趣味でな」
「ふーん。
いいね、オレ趣味とかないから」
「それは哀れだ」
ひねくれてるなぁ。

