いきなり声かけたら慌てるかな、って思ったんだけど。 予想に反し、宮迫柚子はぴくりともしない。 オレはあきらめないで、黙々と読書にふける柚子に声をかけ続ける。 「ゆーずちゃん」 「……」 「ゆーずー」 「……」 「柚子っち!」 「……」 「宮迫さん」 「…なんだ」 やっとのことで、のそりと顔をあげた柚子。 「てっきり同名の生徒がいるのかと思ってな。 呼び慣れんから、気付かなかった」 悪い、と言ってまた読書に戻ってしまった。 ねえ。 その本、そんなに面白い?