西野くんの偽カノジョ




この好きな匂い



あたしの目の前にあるこの大きな手



一言だけ呟いた声。



この3つだけだって、あたしには誰だか分かる。



それは…



今1番会いたくなかった


「西野くん…」



あたしが西野くんの前を呼ぶと



「結衣」



西野くんはあたしの名前を低い声で呼んで、離してくれるかと思ったら



逆にさっきよりも強く抱き締めてきた。




背中越しに西野くんの鼓動がトクントクンとゆっくり聞こえてきてそれが心地よくて



ずっとこのままでいて欲しいって思ってしまうけれど



頭の中につばきちゃんの姿が浮かんできてあたしは


「離して…下さい」



と言って西野くんを拒んだ。