都会の駅で手を引かれて電車を降りて、改札を出てちょっと歩いたところであたしは足を止めた。
「ぐすっ…かえ…る」
溢れ出すのを我慢してた涙が流れてきてしまった。
「は?何言ってんだよ?」
溜め息をついて、こっちを向いてくれたけど視線はあたしよりもちょっと上の所を見ていて
やっぱり目を合わせてくれなかった。
「ぐすっ…メイ…ク落と…してふぇ…ワン…ピー…スも…着替え…てくる…」
あたしが手を繋いでいた右手を離して、駅に戻ろうとすると
腕を引っ張られて、人気の少ない通りに入ってそのまま押し付けられた。
「ぐすっ…やだ…離して!帰…る。」
あたしが泣きながらこう言ったって視線は逸らしたまま。
「…離さねぇよ」
「ねぇ…なんで?こっち見てくんないの?」
「…見てるよ」
なんでいつもみたいに目を合わせてくれないの?
だから帰るって言ってるのに。
「見てない!もういいよ!…んっ」
葵くんは唇をあたしの唇に押し付けてきた。

