葵くんは何も言わずに陰でこうやって助けてくれる。
親に連絡を入れてくれたことも…
数学の問題を解説付きでまとめてくれたことも…
他にだってたくさんある。
本当にこの人はあたしには勿体無さすぎる人だ。
って言っても、手離したりすることはできないけどね。
あたしは家からバイト先まで歩いて行くと、バイト先の裏口に回ってドアを開けると…
「お疲れ様です!」
と言って事務所の中に入った。
すると、ちょうど部屋から出てきた葉山先輩がいて笑顔であいさつをした。
「良かったな、結衣。ここに来てから1番いい顔してる。」
たしかに…
葵くんにバイトしてることを隠してたことの罪悪感や、すれ違って不安になってた時は
作り笑いばっかりで無理矢理笑って接客してたことがほとんどだ。
「ありがとうございます。今日はいつもよりも頑張ります!」
「無理はすんなよ。でもずっとその笑顔でいろよ。
俺もお前の笑顔で頑張れそうだ。」
葉山先輩はそう言って、コーヒーを注ぐとまた上に上がって行ってしまった。

