葉山先輩はその後も話を続けた。
「でもアイツはそんな奴じゃないって思ったから諦めがついたんだ。
だからアイツの前ではいつでも素直に泣いたり、怒ったり、笑ったりしろ。…いいな?」
と葉山先輩は立ち止まってあたしが返事をするのを待った。
…いいんだ。
簡単なことだったんだ。
ありのままを自分を見てもらえばそれでいいんだ。
最近、西野くんの前で泣かないようにしてたけど
泣いてもいいんだ。
そう思ったらあたしは葉山先輩に向かって笑顔で「はい!」と返事することができた。
あたしが笑顔を葉山先輩に向けると、葉山先輩も笑ってくれた。
「やっと笑ったな。さぁ、誤解してヤキモチ妬いてる結衣の王子様が家の前で待ってるから早く行け。」
「え…」
葉山先輩の言われた方向を見ると、あたしの家の前で壁に寄り掛かってこっちを見ている西野くんがいた。
「西野くん…」
「ほら、これ。父さんが試作。後で感想聞かせてって。じゃあな。」
葉山先輩はあたしにケーキの箱を渡すと後ろを振り返って帰って行った。
「葉山先輩!」
あたしは少し大きな声で葉山先輩を呼んで
「ありがとうございました。」
と言った。そしたら葉山先輩は「別に大したことしてねぇよ。ちゃんと素直に話せよ。」と行って今度こそ帰って行った。

