西野くんの家から飛び出すと……
あたしはまだ時間にはだいぶ早いけどバイト先に向かった。
バイト先まで歩くと、今日はオープンからのひとみがせっせと開店の準備をしていた。
そしてお店の窓を拭いているひとみを見つけると、あたしは一目散に走っていて抱き着いた。
「ぐすっ…ひとみぃー」
ひとみに抱き着いて安心したあたしは涙が溢れてきて我慢できずに泣き出してしまった。
「え、ちょっと結衣?どうしたの?
今日って西野くんの家に行く日じゃなかったの?」
くるっと振り向いたひとみはすごく驚いていて、1人で慌てていた。
「だってー…あたし…西野くんの…偽彼女だった…んだも…ん。」
《偽彼女》って自分で言ったのに、言ったらまた辛くなってきた。
追いかけてもくれなかったってことは本当だってことだよね。
「いったいどうしたらそんな展開になっちゃったの?」
「ぐすっ…分かんないー!」
もう考えたくもないよ。
だって、このバイトだって、勉強だって
一生懸命に頑張る意味がなくなっちゃったんだもん。

