西野くんの偽カノジョ




「そっか、昔の結衣とは変わったんだな。



初めて会った時は一夜漬けなんかやってたからフラフラだったし。」



今となったら笑えるな。


その後、俺は結衣を抱えて保健室まで走って行って連れて行ったんだから。



俺がそう言うと、目を見開いてる結衣。



「西野くん、…覚えてるんですか?」



「何言ってんだよ。忘れたくても忘れらんねぇよ。



おんぶしたのもあれが生まれて初めてだし。」



あの時…結衣が意識が途切れる瞬間に



《…ごめんね。西野くん、ありがとう。》



って耳元で結衣が放った言葉が今も離れない。



だって、本当に関わるようになってから結衣は敬語で他人行儀で



あの時のようにぎゅっと抱き着いたり、普通に話したりしないから。



それは付き合った今でもそれが変わらないし…



普通に何でも話し合える野中さんが正直羨ましく感じる。