西野くんの偽カノジョ




「葵、まだ俺達のことに気付いてないから、早く行っといで。



きっとその辺の空き教室に行くと思うから。」



ハルくんはにっこり笑いながらあたしの背中を押してくれた。



「はい、ありがとうございます!」



「1時間目はそのまま2人でさぼっちゃいな!それであの怒りを沈めてきて。」



あたしが?そんな大きな仕事を?



あたしはハルくんじゃないしそんなことできるのかな?



「う…それはあたしにできるかどうか…」



あたしに西野くんの怒りを沈めることなんて…



むしろ怒らせてばっかりなのに。



「大丈夫!『西野くん、大好きです!』って言えばそれで終わりだから…ねっ?」



恥ずかしすぎる。



そ、そんなことできるわけないです!って言おうとしたら



「授業始まっちゃうから、じゃあね!」と手を振られちゃって、結局あたしは"できない"と言うことができなかった。



あたしは同じ階で空いている教室を探しながら西野くんを探した。



内心、先生に遭遇したらどんな言い訳をするか考えて…。