私はどんなことがあっても酒、煙草は一切口にしない。喉の保護の為、BAZZのヴォーカリストとして結成当時から自分の中で決めていること。まだ一度もこれは破られていない。多分、これからもずっと…。
「はい、詩」
「ありがと」
圭一さんの元から戻ってきた綾那はレモン水が注がれたグラスを私に手渡す。
「詩、そろそろ始めるぞ」
「あ、うん」
皆の輪から外れていた私たちを空が呼びに来てくれた。相変わらず綾那には目もくれずにスタスタと皆の輪の中へ戻ってゆく。付き合いがそれなりに長い綾那でさえこうだ。少しは愛想良くしてもいいと思うのだが、こればかりはしょうがない。
「相変わらずだね、水嶋君は。私、最初の頃ずっと嫌われてるんだと思ってた」
「誰に対しても空はあんなだよ」
「昔から?」
「んー…小さい頃は普通だったよ。今より愛想良かったし、明るい男の子だった」
「そうなの?」
綾那は意外そうに私の顔をじっと見つめた。
「うん。中学に上がる少し前かな? 空ね、凄く好きだった年上のお姉さんがいたの。音大に通ってる大学生でハル兄の彼女だった。でも空はお姉さん、百合さんっていうんだけど彼女のこと諦めきれなかったみたい」
「初恋?」
「多分ね…で、確か週末だったと思うんだけど四人で日帰り旅行に行くことになったの。どこだったか忘れたんだけど、多分都内だったと思う。近くに小さい旅館があって一緒に温泉入りに行ったんだけど、そこの旅館の温泉が混浴だったの。百合さん、過剰に嫌がってたんだけど、私が無理矢理連れて一緒に入ろうとした。今思えば、私が無理に百合さんを連れたから空は女嫌いになったのかもしれない。
小学生とはいえ、女の裸に興味ない男なんていないでしょ? きっと空、期待してたんだと思う。けどその期待は見事に裏切られた。――男だったの、百合さん」
「え……男?」
綾那の大きなその瞳がさらに大きく見開かれた。それは驚くだろう。私も当時は衝撃的で中々、信じられずにいた。
「付き合って間もなかったみたいだからハル兄も知らなかったみたい。かなりショック受けてた。…その後すぐ別れたみたいだけど」
「じゃあ、それがトラウマで?」
「うん。あの日から空は滅多に笑わなくなったし、何より女の人を避けてた。きっと信じられなくなったんんじゃないかな?」
「そっか…」
「はい、詩」
「ありがと」
圭一さんの元から戻ってきた綾那はレモン水が注がれたグラスを私に手渡す。
「詩、そろそろ始めるぞ」
「あ、うん」
皆の輪から外れていた私たちを空が呼びに来てくれた。相変わらず綾那には目もくれずにスタスタと皆の輪の中へ戻ってゆく。付き合いがそれなりに長い綾那でさえこうだ。少しは愛想良くしてもいいと思うのだが、こればかりはしょうがない。
「相変わらずだね、水嶋君は。私、最初の頃ずっと嫌われてるんだと思ってた」
「誰に対しても空はあんなだよ」
「昔から?」
「んー…小さい頃は普通だったよ。今より愛想良かったし、明るい男の子だった」
「そうなの?」
綾那は意外そうに私の顔をじっと見つめた。
「うん。中学に上がる少し前かな? 空ね、凄く好きだった年上のお姉さんがいたの。音大に通ってる大学生でハル兄の彼女だった。でも空はお姉さん、百合さんっていうんだけど彼女のこと諦めきれなかったみたい」
「初恋?」
「多分ね…で、確か週末だったと思うんだけど四人で日帰り旅行に行くことになったの。どこだったか忘れたんだけど、多分都内だったと思う。近くに小さい旅館があって一緒に温泉入りに行ったんだけど、そこの旅館の温泉が混浴だったの。百合さん、過剰に嫌がってたんだけど、私が無理矢理連れて一緒に入ろうとした。今思えば、私が無理に百合さんを連れたから空は女嫌いになったのかもしれない。
小学生とはいえ、女の裸に興味ない男なんていないでしょ? きっと空、期待してたんだと思う。けどその期待は見事に裏切られた。――男だったの、百合さん」
「え……男?」
綾那の大きなその瞳がさらに大きく見開かれた。それは驚くだろう。私も当時は衝撃的で中々、信じられずにいた。
「付き合って間もなかったみたいだからハル兄も知らなかったみたい。かなりショック受けてた。…その後すぐ別れたみたいだけど」
「じゃあ、それがトラウマで?」
「うん。あの日から空は滅多に笑わなくなったし、何より女の人を避けてた。きっと信じられなくなったんんじゃないかな?」
「そっか…」
