ボソボソッと章一と耳元で話す。水瀬さんに聞こえないように。
私たちの目の前に差し出された料理は自分たちが選び、注文したわけではない。水瀬さんのお任せで彼が直々に作ってくれた。確かに野菜が好きだと言ったが、こんなにはいらない。これでは本当の草食動物になってしまう。だが、私以外うちの男共は野菜嫌いの肉食動物なのだから私が食べるしかない。
「…なんか、私うさぎにでもなった気分」
「は?」
楽しく談笑しながら食事をしていると、ふと思った。カリカリ、とソースをつけて野菜を食べている自分の姿は小さい頃に動物園で見たうさぎのお食事タイムに似ているかもしれない。
「小動物みたい」
「…うるさい、ルイ。食べるの手伝ってよ」
「やだ。嫌いだもん」
子供か。
「それにしても、詩。今回曲の出来上がり遅くなかったか? いつもより」
「ああ…今回メロディーより先に詞が浮かんだからね。なんか手間取っちゃって」
曲制作に一度でも携わったことがある人ならばわかると思うが、一般的に曲を作る際はメロディーから先に手をつけ、そしてそのメロディーに詞を乗せる。いつもなら私もその方法で曲制作に挑むのだが時折、先に詞が浮かぶ時がある。慣れていないせいか、ペースが落ちてしまうのだ。
「ふーん」
「でも今回やけに激しい曲やなあ? 俺は好きやけど」
「…やっぱり? 調子乗りすぎたかな」
「ええんちゃう? 社長気に入っとったみたいやし」
「少なくとも俺らは好きだぜ」
「ありがと」
プライベートな時間であってもこうしてなぜか仕事の話が出てしまう。根っからの仕事人間なのかもしれない。年頃の若い男女が交わすような会話は滅多に出てこない。別に仲が悪いわけではないのだが、自然と話が仕事の話にいってしまう。
他のバンドと比べるとBAZZは仲が良く、プライベートでもこうして集まって食事することは多々ある。最も、私はよく暇潰しで作曲してたりするので中々タイミングが合わなく、集まって食事するのは三ヶ月振りかもしれない。
その後、私たちが店を出たのは十時を過ぎた頃だった。結局、野菜は食べきれずに残してしまった。水瀬さんには申し訳ないが。
私たちの目の前に差し出された料理は自分たちが選び、注文したわけではない。水瀬さんのお任せで彼が直々に作ってくれた。確かに野菜が好きだと言ったが、こんなにはいらない。これでは本当の草食動物になってしまう。だが、私以外うちの男共は野菜嫌いの肉食動物なのだから私が食べるしかない。
「…なんか、私うさぎにでもなった気分」
「は?」
楽しく談笑しながら食事をしていると、ふと思った。カリカリ、とソースをつけて野菜を食べている自分の姿は小さい頃に動物園で見たうさぎのお食事タイムに似ているかもしれない。
「小動物みたい」
「…うるさい、ルイ。食べるの手伝ってよ」
「やだ。嫌いだもん」
子供か。
「それにしても、詩。今回曲の出来上がり遅くなかったか? いつもより」
「ああ…今回メロディーより先に詞が浮かんだからね。なんか手間取っちゃって」
曲制作に一度でも携わったことがある人ならばわかると思うが、一般的に曲を作る際はメロディーから先に手をつけ、そしてそのメロディーに詞を乗せる。いつもなら私もその方法で曲制作に挑むのだが時折、先に詞が浮かぶ時がある。慣れていないせいか、ペースが落ちてしまうのだ。
「ふーん」
「でも今回やけに激しい曲やなあ? 俺は好きやけど」
「…やっぱり? 調子乗りすぎたかな」
「ええんちゃう? 社長気に入っとったみたいやし」
「少なくとも俺らは好きだぜ」
「ありがと」
プライベートな時間であってもこうしてなぜか仕事の話が出てしまう。根っからの仕事人間なのかもしれない。年頃の若い男女が交わすような会話は滅多に出てこない。別に仲が悪いわけではないのだが、自然と話が仕事の話にいってしまう。
他のバンドと比べるとBAZZは仲が良く、プライベートでもこうして集まって食事することは多々ある。最も、私はよく暇潰しで作曲してたりするので中々タイミングが合わなく、集まって食事するのは三ヶ月振りかもしれない。
その後、私たちが店を出たのは十時を過ぎた頃だった。結局、野菜は食べきれずに残してしまった。水瀬さんには申し訳ないが。
