私はエレベーターでEnergyの三階まで昇った。ここは会員ごとにフロアが分かれていて、一階がレギュラー会員、二階がシルバー会員、三階がゴールド会員、となっている。屋上に屋根つきの小さなカフェが設置してあり、運動した後の休憩所として会員たちが利用している。紅茶の種類が豊富で美味しく、私も利用させてもらっている。
チン、という音と共にエレベーターの扉がゆっくりと開いた。のどかな田園風景を描いた水彩画が瞳に映り、それが目の前の壁に掛けてある。どこか癒される絵だ。
細長い廊下を歩き、突き当たりを曲がると通路が広くなった。そこに三つのドアが横一列に並び、手前から女子更衣室、男子更衣室、ジムの入口、となっている。向かい側に黒い革の三人掛け用ソファーが間隔を空けて二つ横に並ぶ。奥に階段が見え、その先は屋上へと続いている。
私は女子更衣室でジャージに着替え、磨りガラスのジムのドアを開けた。
「あ」
「…あ」
受付でチェックイン、もしくはチェックアウトを済ませている一人の少し背が低い男性と目が合った。私の数少ない友人の一人だ。名を冴島 巧という。今年で三十路を迎えるというのに若々しい格好をしていて、引き締まった逞しいその体つきに衰えの影は見当たらない。切れ長でつり目がちなその瞳は妙に色っぽく、エロい。女好みの綺麗な目鼻立ちをしているので、女性にはモテモテだ。
彼は私と同じ同業者でメジャーデビュー六年目のロックバンド、Refoloのヴォーカリストだ。関西出身の五人組で音楽に対する思いは私たちに負けず劣らず、真摯でとにかく熱い。綺麗事じゃなく、ストレートにぶつかってく飾り気のない歌詞が人々を惹きつける。
「…これからですか?」
「ん、ああ。久しぶりやな」
「そうですね」
と、何気ない会話を交わしながら私は受付でチェックインを済ませてゆく。
「今日はオフ?」
「夕方から打ち合わせです。やっと新曲ができたんですよ」
「よかったやん」
クシャッと大きな手で頭を撫でられる。背が低いせいか、私は男女問わず、この行為をされることが多々ある。身長は一五○センチにも満たない。子供扱いされているようで嫌だ。
私が不満げに巧さんをじっと見つめているとその視線に気づいて彼も私の顔をじっと見た。
チン、という音と共にエレベーターの扉がゆっくりと開いた。のどかな田園風景を描いた水彩画が瞳に映り、それが目の前の壁に掛けてある。どこか癒される絵だ。
細長い廊下を歩き、突き当たりを曲がると通路が広くなった。そこに三つのドアが横一列に並び、手前から女子更衣室、男子更衣室、ジムの入口、となっている。向かい側に黒い革の三人掛け用ソファーが間隔を空けて二つ横に並ぶ。奥に階段が見え、その先は屋上へと続いている。
私は女子更衣室でジャージに着替え、磨りガラスのジムのドアを開けた。
「あ」
「…あ」
受付でチェックイン、もしくはチェックアウトを済ませている一人の少し背が低い男性と目が合った。私の数少ない友人の一人だ。名を冴島 巧という。今年で三十路を迎えるというのに若々しい格好をしていて、引き締まった逞しいその体つきに衰えの影は見当たらない。切れ長でつり目がちなその瞳は妙に色っぽく、エロい。女好みの綺麗な目鼻立ちをしているので、女性にはモテモテだ。
彼は私と同じ同業者でメジャーデビュー六年目のロックバンド、Refoloのヴォーカリストだ。関西出身の五人組で音楽に対する思いは私たちに負けず劣らず、真摯でとにかく熱い。綺麗事じゃなく、ストレートにぶつかってく飾り気のない歌詞が人々を惹きつける。
「…これからですか?」
「ん、ああ。久しぶりやな」
「そうですね」
と、何気ない会話を交わしながら私は受付でチェックインを済ませてゆく。
「今日はオフ?」
「夕方から打ち合わせです。やっと新曲ができたんですよ」
「よかったやん」
クシャッと大きな手で頭を撫でられる。背が低いせいか、私は男女問わず、この行為をされることが多々ある。身長は一五○センチにも満たない。子供扱いされているようで嫌だ。
私が不満げに巧さんをじっと見つめているとその視線に気づいて彼も私の顔をじっと見た。
