「圭一さん、ルイ知らない?」
「ルイ? ……ああ、あいつなら休憩室で寝てる」
「そう」
確認の為、カウンターの奥にある休憩室を覗いてみる。そこにルイはいた。決して綺麗とは言い難く、煙草の臭いが染みついているその一室で気持ち良さそうに眠っている寝顔はまるで天使のようで、不覚にもつい見とれてしまう。どうでもいいが、よくこんな煙草臭い部屋で寝られるものだ。私には理解不能。
風邪を引いてしまうといけないので近くにあったブランケットを大きなその体にそっと掛けてあげる。こんなことをしているとルイの母親にでもなった気分だ。自然と表情も和らぐ。
「ルイ、いた?」
「うん。休憩室で寝てた」
綾那の元へ戻ると空はいなく、学生時代の友人と談笑をしていた。楽しそうで何よりだ。
「ふふ、相変わらずだね」
「うん。ルイだけは昔から何も変わってない」
人は成長するにつれ、少なからず変わってゆくもの。しかし、ルイはBAZZ結成当時から何も変わってない。あの頃の純粋な心のまま。
チリーン。
店の鈴が鳴り、視線をそちらに向ける。
「え…」
「あ、栗山さん! こっち!」
そこには昨日会ったばかりの義人さんがいて綾那が大きく手を振り、彼に合図する。
「ごめんね、遅くなって」
「義人さん…」
「私が呼んだの」
だと思った。彼の連絡先を知っているのは綾那くらいだ。
「何か飲みます?」
「…じゃあ、梅酒ある?」
「あ、私貰ってくる」
綾那は素早く圭一さんの元へ行き、お酒を作ってもらっている。
「新曲出来たんだって? 綾那ちゃんから聞いた」
「はい、あの後なんとか仕上がりました」
「そっか、良かったじゃん」
彼は私の隣に腰掛け、小さな子供をあやすように私の頭を優しく撫でてくれた。昔は彼にされるこの行為が嬉しかったが、今はあまり好きではない。子供扱いされているようで。きっと彼の瞳に映る私はハル兄と一緒に遊んでいた頃の幼いままの私で女性としては見てくれていないのだろう。
「栗山さん、どうぞ」
「ありがとう、綾那ちゃん」
「ロックで平気でしたか?」
「うん」
と、綾那は彼にお酒を手渡すとそのまま別の席へと行ってしまった。彼女なりに気遣ったのだろう。
「ルイ? ……ああ、あいつなら休憩室で寝てる」
「そう」
確認の為、カウンターの奥にある休憩室を覗いてみる。そこにルイはいた。決して綺麗とは言い難く、煙草の臭いが染みついているその一室で気持ち良さそうに眠っている寝顔はまるで天使のようで、不覚にもつい見とれてしまう。どうでもいいが、よくこんな煙草臭い部屋で寝られるものだ。私には理解不能。
風邪を引いてしまうといけないので近くにあったブランケットを大きなその体にそっと掛けてあげる。こんなことをしているとルイの母親にでもなった気分だ。自然と表情も和らぐ。
「ルイ、いた?」
「うん。休憩室で寝てた」
綾那の元へ戻ると空はいなく、学生時代の友人と談笑をしていた。楽しそうで何よりだ。
「ふふ、相変わらずだね」
「うん。ルイだけは昔から何も変わってない」
人は成長するにつれ、少なからず変わってゆくもの。しかし、ルイはBAZZ結成当時から何も変わってない。あの頃の純粋な心のまま。
チリーン。
店の鈴が鳴り、視線をそちらに向ける。
「え…」
「あ、栗山さん! こっち!」
そこには昨日会ったばかりの義人さんがいて綾那が大きく手を振り、彼に合図する。
「ごめんね、遅くなって」
「義人さん…」
「私が呼んだの」
だと思った。彼の連絡先を知っているのは綾那くらいだ。
「何か飲みます?」
「…じゃあ、梅酒ある?」
「あ、私貰ってくる」
綾那は素早く圭一さんの元へ行き、お酒を作ってもらっている。
「新曲出来たんだって? 綾那ちゃんから聞いた」
「はい、あの後なんとか仕上がりました」
「そっか、良かったじゃん」
彼は私の隣に腰掛け、小さな子供をあやすように私の頭を優しく撫でてくれた。昔は彼にされるこの行為が嬉しかったが、今はあまり好きではない。子供扱いされているようで。きっと彼の瞳に映る私はハル兄と一緒に遊んでいた頃の幼いままの私で女性としては見てくれていないのだろう。
「栗山さん、どうぞ」
「ありがとう、綾那ちゃん」
「ロックで平気でしたか?」
「うん」
と、綾那は彼にお酒を手渡すとそのまま別の席へと行ってしまった。彼女なりに気遣ったのだろう。
