一回ため息。
そして口で開く。
「オレには本名があるらしい。だけど知らない。知りたくない。」
三國は悲しそうな顔をして言った。
隣にいる私を見てない。
どこか遠くを見ている。
私も真剣に聞いた。
聞かなければ良かったと後悔しながら。
だって・・・三國、すごい辛そうだから・・・。
三國が話してくれている。だから、私も真剣に聞くんだ。
「戸籍みれば本名なんかすぐ分かるんだ。でも例え分かったとしてもその名前を名乗るつもりはない。」
下向く三國。
三國を見つめる私。
「どうして・・・?」
そう聞いた途端三國の顔が怒りや苦しみが伝わってくるような表情に変わった。
「オレはオレに名前をつけた人が大嫌いだからだ。」拳を強くにぎっていた。
私は、まだまだ疑問はあったけど聞く気はもうなかった。
辛い思いをさせて悪かったなと思った。
「でさ!どこ行く?」
三國は顔を変えてニコって微笑んだ。
さっきまでの顔と全く違う顔つきに。
さっきまで見ていた、三國。
(もしかして・・・)
ううん。多分。
三國のこの微笑は偽物だ。いくら辛くても、微笑まなきゃいけない所にいるんだ。三國は。
「どこでもいいよ」
軽く微笑んだ。
「んじゃ時間あるし映画見るか!!」
三國は私を映画館に連れて行った。
その時、三國が私の肩に少し触れて、三國が「ごめん」って謝ってくれたけど・・・もう・・・イヤな気分ではなかった。
自分に自分を語ってくれた人にイヤな気分は抱かなない。
私の三國への第二印象は゛キライじゃない゛。
まだよく三國のコトはわかんないけど、キライじゃないみたい。