私が三國の陰に隠れていると、一人の女の子が複雑な表情をした。
廊下側の席。
髪がくるくる巻かれている。
顔を見て、めまいがした。
忘れる事の出来ない顔。
「麗花ちゃん・・・」
遠山麗花ちゃん。
私をイジメようと皆に指図した張本人。
あの子の一言から始まったイジメ。
元々もろかった関係をあっという間に崩した人。
「カノ・・・?」
三國が不思議そうに、私の強張った顔を見た。
麗花ちゃんと目が合って離れない。
先生がパンパンと手を叩いた。
その瞬間、麗花ちゃんと目が離れた。
「早く中に入れ!」
三國がはーいって言って席についた。
「こっちだよ」
三國が席を案内してくれた。
「ここ」
三國が窓際の席を指さした。
「オレはここ。」
私の隣の席を指さした。
「本当に隣だったんだ」
私は席についた。
先生が普通にかどうかは、久しぶりに学校に来たから分からないけど、多分普通にHRをしていた。
学校に来なくなってから、6ヶ月近く。
短そうなその時間はとても長いものだった。
ようやく私は学校に来ることができた。
三國のおかげで。
「んじゃ終わりー」
HRがやっと終わった。
先生が話している時、麗花ちゃんは何度も私を見てきた。
でも私は気づかないふり。怖くて、怖くて仕方ない。
「彼音。」
私は名前を呼ばれてビクッて驚いた。
「麗花ちゃん・・・」
麗花ちゃんが私の席に近づいてきた。
そして、机の横に立った。
麗花ちゃんは、私を見つめている。
三國は、HRが終わった後、トイレに行ってしまった。
私は、椅子に座ったまま麗花ちゃんと話していた。
「あのさ、ちょっと来て」
『あのさ、ちょっと来て』・・・。
いつも、こうやって私を陰に呼んで、イジメていたの。
私はずっと固まっていた。怖くて、怖くて。
肩を震わせていたら、ポンって誰かの優しい手。
「み・・・三國」
三國が私の肩に手をのせていた。
そして、耳にコソっと
「大丈夫?」
って。

