後ろから会いたかった人の声。
振り向くと、やっぱり三國が立っていた。
ネクタイをちゃんと付けてた。
「三國、学校・・・?」
「うん。カノ学校は?」
三國は私の隣に、腰をおろした。
「行けない・・・」
私は下を向いた。
「そっかぁ」
三國も悲しそうな顔をした。
つくりものか本当に悲しいのか・・・分からないけど。
私も悲しくなった。
「あのさ、カノの席オレの隣なんだよね。」
「え・・・?」
三國の突然の言葉に少し動揺した。
「カノが来てくれないとオレ一人なんだけど。」
三國は私に学校に来てほしいの・・・?
それとも同情・・・?
「でも・・・」
涙でゆらゆら揺れて見える三國。
「大丈夫。オレが助ける。だからおいで?」
確かに、しっかり、私を安心させる声。
三國なら、大丈夫かなって。
この人なら、私を裏切らないかなって。
信じられるかもって思ったんだ。
涙が出そうになった。
でも歯を食いしばって、我慢した。
のどがギューギュー苦しくなった。
「それに早く学校に来ないとオレとカノ遅刻。カノ出席日数足りないから留年するぞ?」
「えっ!中学って留年あるの!?」
三國は立って座っている私に手をさしのべた。
私は三國の手を握った。
三國は優しく微笑んでいた。
「さあね」
って言って今度は子供っぽく笑うんだ。

三國の隣の席・・・。
私、いていいんだよね?
座っていいんだよね?
私の手をひいてくれてありがとう。

三國は、私の手をひいて走った。
学校に着くと二人とも汗だく。
キーンコーンカーンコーン・・・って音が聞こえる。
HRの始まりのチャイム。
(久しぶりに聞いた)
廊下を三國と一緒にコソコソと、遅刻がバレないように歩いた。
「先生来てるかな?」
小さな声で三國が言う。
三國が皆にバレないようにコッソリとドアを開けた。
カラカラカラと音が絶対鳴るのに。
三國がドアを開けた瞬間皆私たちに注目した。
恥ずかしい!
私が焦っていると、三國が
「皆おはよう!今日もいい天気だね!」
とニコって笑って言った。
皆も「遅い」って言いながら笑うんだ。
先生もにこやか。
私は三國のその度胸とカリスマ性に驚き感心していた。