「もう本当に大丈夫」

俺を見ながら、か細い声で言う。
このまま離したら、どこかに消えていきそうだった。
「送る」
俺は言った。
けれど柊は首を横に振った。
「大丈夫。今日は一人で帰りたい」
……。
「わかった。じゃあな」
柊は、小さな手を振った。
そして俺に背を向け、歩いた。
俺はそんな後ろ姿を、小さくなるまで見送った。



明日、柊はどんな態度を俺にとるのか。
どんな態度でも、俺は平気だ。
今日したことは、後悔しないようにする。
柊が教えてくれたから。
一言一言、重みのある言葉。
柊には、どんな過去があるのか。
そしてその過去を、後悔したことがあるのか。

そんなこと、俺には聞けないな。
まだ、信用されてないから。




いつか、俺があいつの支えになれる日を、待ってる。