4ヶ月前。

まだ桜の花びらが綺麗に舞い降りていた
高3になりたての頃。


「真琴って、ぜーったいモテるでしょ?」


休み時間。


いきなり声が飛んできた
斜め後ろの席を振り返り、私は笑顔で答えた。



「モテないよ~。美沙の方が絶対モテるでしょ?」


小学生みたいな
馬鹿みたいな会話に
私が心底呆れている事なんかに気付くハズもなく
野口美沙は楽しそうに会話を続けた。



「え~、美沙モテないから~!…あー、でもね……」



「何?」



「ん~…やっぱり内緒~!」


美沙のわずかながら
桜色に染まる頬が
私の興味を誘った。



「美沙言ってよ。私達友達じゃん。何でも言い合えるのが友達でしょ?」



少し台詞がクサすぎたかと焦ったが、
そんな不安もよそに
美沙はペラペラとひとりでに喋り始めた。


「そうだよね?じゃあ、真琴だけに言うけどー…A組の落合って分かる?」



落合。


すぐに分かった。

落合は一年の頃から
何度も告白されているけど
全く誰とも付き合わないという噂をよく聞いていた。



「分かるけど?」

美沙は私にグイッと近寄り
小さな声で囁いた。




「……昨日ね?…落合に…告白されたの。」


美沙は続けた。


「それで…OKする事にしたんだ。」



さっきとは比べ物にならない位
分かりやすく桜色に染まる美沙の頬。




「そうなの~!おめでとう!」



ニッコリ笑うと
美沙は気を良くしたのか更に続ける。




「美沙ずーっと好きだったの。だから、めっちゃ嬉しくて♪」





「そっか~!美沙幸せそうだね~!」




…美沙…幸せそうだね。



…今だけは。