「ぅえ!?桃子?!」突然泣き出した私に驚いている様子であたふたしている竜二。私はそんな彼に笑ってしまった。

「へへっ…ごめんごめん。感動してるの…ごめんね」私はそう伝えるとあのヤンキー男、竜二が優しく肩を抱いてきた。それにも驚いて笑いながら泣く私。

「今日、もしかして地球が滅亡する日?!」私は彼の腕の中に収まりながらそんな冗談を言ってみた。幸せすぎる誕生日。生まれてきて今が一番、幸せを感じている…そんな気がする。
彼は何も言わず腕を回したままだった。

しばらくして彼は思い立ったように立ち上がった。
「あっ!!!」なんだなんだ!!このいい雰囲気をまた壊す気か!!

「あった…ビビる…」いやいや、こっちがビビる…心の中で突っ込みながら彼を見つめてみた。
「なんだよ」厳つい顔で私を睨んでくる竜二。元通りの竜二。

「いや、別に…」またここで言い合いが始まるとまた喧嘩になってしまう気がしたから私の言いたいことは自分の胸の奥にしまっておくことにした。

「はい…」ポケットから何かを取り出して私の前に差し出してくる竜二。
私は両手を出して彼の手の中に入っている何かを受け取った。

「可愛い…」私の手に乗っていたのは優しい色の髪を結うもの。竜二が選んだとは思えないくらい可愛らしい髪止めだった。

「竜二が選んだの?」私は髪を結っていたゴムを外して彼に貰ったゴムを使って髪を結った。
「おう…新に着いてきてもらった。」恥ずかしそうに言う彼がまた可愛らしい。
「桃子、髪長いから…」そんな風に説明してくれる彼が愛しいと思った。

「どう?似合ってる?」私は彼に見せながら尋ねてみた。
「似合うよ…ま、俺が選んだからな!!似合うに決まってんだろ」いつもならここで反抗するけれど今日は素直にありがとう、そう伝えようと思った。

「ありがと」私は竜二に軽く頭を下げて笑顔でお礼を言った。きっと学校のみんなが今の私たちを見ればびっくりするんだろーな。

そんなことを考えていたら彼が私の腕を引っ張って優しくて甘いキスをしていた。
私もされるがままにゆっくり目を閉じた。

ありがとう、神様。
ありがとう、マリア様。
ありがとう、仏様。

誰にお礼を言えばいいのか分からないけどでもいつも空の上で私をみてくれている人がご褒美としてこんな幸せをくれたんだ。