それがいつしかみんなにはオシドリ夫婦のように見られ安心された。
でも正直イライラが増えたし、腹立つことも増えた。迷惑はかけられるし邪魔されるし、週に一回は体を求められ嫌なことも多かった。
だけど…それを覆す彼のあの笑顔が忘れられなくて…
どうしても離れられなかった。
「明日、誕生日だね、桃子!!」詩は嬉しそうに私に話しかけてくる。
「そうだねーはぁー」大きなため息をつきながらお弁当を広げる。
「何よ~竜二くん、祝ってくれるんじゃないの!?」ニタニタしながら尋ねてくる詩。
「そんな訳ないでしょ…もー誕生日どころじゃない。あいつは何を考えているのかさっぱりわからん!!」
「えー最近仲よさそうだったじゃん」幸せそうな詩を見れば余計惨めになる。
「あのね…みんな、勘違いしてるから。私はあいつに振り回されてるの。もー20回は別れ話したよ…」私が苦笑いをしても詩は疑いの目で私を見てくる。
「嘘じゃないよ。もーみんな変に勘違いしすぎ。まじでこっちは疲れてるの!!」
「ふーん。そうなんだ」こいつ…!絶対信じてない!!
「桃子ー」ほら、来た。会いたくないやつNo.1男。私はブスッとした顔で竜二を見た。
「なんだよ、その目」私の席の前に来て話しかけてくる竜二。昨日も私をイライラさせた張本人。昨日のことなんか、絶対覚えてない。いや、こいつは一分前のことでさえ覚えていないバカ男だ。
「別にー何の用ですかー?」 顔色一つ変えず尋ねる。
「お前のその顔ムカつく」机に凭れながら文句を言い出す男。
「あんたね!!昨日したこと覚えてないの?!ムカつくのはこっちだっつーの」
「昨日?何かしたか?俺。」何もなかったかのように振る舞う竜二。よくもそんな何もありませんでしたオーラ出せるわねクソ野郎!!
「もーいい。キレるのも面倒くさい。で、何?」私は竜二を睨む。
「お前がめちゃくちゃにキレるから全部忘れた。じゃ!!」竜二は右腕を上げて教室を出ていった。
「くー!!ムカつくー!一回死ね!!地獄にでも落ちろ、クソ野郎!!」竜二が出ていったドアに向かって叫ぶ。
「やっぱり仲よさそうにしか見えないんだけどな~」詩が笑顔で話す。
「違うってばー」私はため息をついてお弁当にまた手をつけはじめた。



