アニマルマジック


竜二は突然私の体を壁に押し付けてキスしてくる。

「ちょ……っ」
彼の胸板を全力で押しても離れてくれない。離れてもすぐに角度を変えて私を求めてくる。

途切れ途切れに空く隙間で彼の名前を呼ぶ。
「りゅっ……う…じっ」

竜二が竜二じゃないみたいに…そんな気がして涙が突然流れてしまう。

竜二は一瞬びっくりした顔をしたけど、また何もなかったように私に迫ってくる。

ようやく体が離れて竜二は少し段差のあるところに腰をおろした。

「竜二……」竜二は何も言わなくて。雰囲気がとても怖い。

「何があったの……?」
私はゆっくりと尋ねてみる。

「お前には関係ない。そして別に知る必要もない」私はその言葉を聞いて震えが止まらなかった。

竜二…竜二…っ

彼は変わってしまった。
あの頃の竜二はただ怒りと悲しみを抱えて過ごしていた。

誰にも言えなくて苦しくて…ずっとずっと暗闇の中でさまよっていたはず。

暗闇で叫んでも誰も気付かない。誰も彼を理解しようとしなかったんだ。