竜二はしばらくして私の唇から離れた。いつもならやってやったと言わんばかりのドヤ顔なのに今日はずっと恥ずかしそうにしている。
きっとこんなお祝いをするのが初めてなのかもしれない。

「今日は照れてるね」私も彼を少しからかいながらそんなことを言う。
「うっせ!!もーしねーぞ。女もんの店入るのまじで恥ずかしいっての」
そんなことを言う彼にもドキドキする。今日の私の胸の高まりを止めることはきっとできない。

「確かにっ」キョロキョロしながら女ものの店に入る竜二を想像すると笑えてしまう。こんなに厳つい男が可愛らしい髪止めを買ったもんだからきっと周りの人はびっくりしたんだろうな…。

「ありがとうね、竜二。気に入ったよ」
「おー。あたりまえだ。気に入らなかったら蹴り飛ばしてたしな」彼らしい言葉でまた微笑んでしまう。

竜二は私を家の前まで送ってくれた。
「じゃ、」竜二は恥ずかしそうに後ずさりしている。
「かたっ。表情堅いよ~」私は笑いながら竜二を見送った。竜二は不満そうな顔をして自分の家に帰っていった。

「ただいま~」ドアを開けるとお姉ちゃんが腕を組んで立っていた。もちろん姉とは唯一、竜二との付き合いを知っている姉、芽雛。
「な、何…?」 私は苦笑いをしながら靴を脱いでいく。
「何時だと思ってんのよ?!中学生がこんな時間までうろちょろうろちょろ!!」
なんだなんだ…この姉はどうした?!いつもこんなこと言わないくせに…

「あ、すいません…」とりあえず謝っておいた。
「どうせあの男と居たんでしょ?」 照れ臭そうに話すお姉ちゃん。
「え、うん…何でそんな照れてるの?」

「いやー別に~心配なってちょっと探しに行ったらキスしてるとこ見たなんてよー言わん」そう言ってリビングの方に走っていった美人の姉。
見られたのか…///

私は自分の部屋に戻って荷物を置いた。
髪を結っているゴムを外して見つめてみる。
「恥ずかしかっただろうな…お店入るの」一人ごとを呟きながら優しく手で包み込む。
「絶対大事にするから…」

今日はきっと眠れないだろう。この胸の高まりが収まるまでは…