†不思議の童話館†

しばらくすると、私の背後から声が聞こえてきた。
「水晶!」
振り返ると、姉が小走りで私に近付いてきている所だった。
「遅いんだけど」
私は不機嫌に姉を睨む。
「ごめーん!・・・って、ちょっと遅れただけでしょぉ?!」
「私が待つの嫌いなの、知ってるでしょ。さっさと行こうよ。で、さっさと警察に突き出して帰る。あと、弁護士も・・・」
「水晶、何の話してるの?」
私が考えながらぶつぶつ言っていると、姉が首を傾げた。
「何でもない」
「そう?あ、水晶。今日、学校どうだった?馴染めそう?友達出来た?」
にこにこと微笑みながら聞いてくる姉。
私はそんな姉を一瞥すると、言い放った。
「分かってるくせに。いちいちそんな事聞かないでよ」
分かってるくせに・・・。私に期待なんかしないでよ。
「・・・水晶・・・」
姉は、驚いた様な傷付いた様な表情で私を見つめた。


「真珠姉、そんな事より早く行こう。私、暇じゃないから。家に帰ったらモデルガン作らなきゃいけないし」
「あんた、まだそんな事言ってるの?!女の子がモデルガンなんて・・・」
「人の趣味にまで文句つける気?」
私が睨みつけると、姉はこれ以上私を怒らせるのはまずいと思ったのか、
「じゃあ、行きましょうか。学院の裏手にあるのよ。すぐ近くだから、歩いて行きましょう」
話題をそらして、歩き始める。



その、怪しげなアンティークショップまでは、五分もかからなかった。
学院の裏手に回り、ラーメン屋の角を右に、本屋の角を左に曲がり、そこに伸びる広い道の突き当たりの、左側に建っていた。