「何にも話せねぇのか!やっぱ口だけ野郎はちげぇな!」
「夏目!」
美羽の言葉にこたえる気のなかった夏目が、ついに命令を聞いた。
あまりにも名を呼ばれた声が怒りと軽蔑がこもっていたからかもしれない。
「謝ってよ!瀬田君に口だけやろうって言ったこと!謝って!」
優衣は驚くことも忘れ、アホみたいに口を丸の字にした。
こんなに怒った美羽を見たことがなかったかためか、瀬田のことをかばったからか。きっと両方の驚きが身に迫った。
「瀬田君はすごいよ!名声だけじゃない。すごい実力も持ってるんだよ!?何にも知らないでそんなこと言わないで!」
嵐の後の静けさが教室内に訪れた。


