Loving Expression ~愛を詩にのせて送ろう~



「優衣。もう帰ろうよ」


肩に学生かばんをかけ美羽はヘッドフォンを持ち主に返した。


優衣はそれを渋々受け取り自分のカバンをつかみ取った。


「もーまだ1番なのに」


「家帰って聴くよ」


自分のお気に入りの曲を最後まで聞いてくれなかったことに対して不満そうだったが、共に教室を出た。


薄茜色の廊下を渡り、階段を駆け降りる。


時たますれ違う教師のいぶかしげな瞳を浴びつつ、挨拶をした。


こんな時間まで残っているのが珍しいのかもしれない。


下駄箱から黒いスニーカーを取り出し、オレンジに染まった校舎から出る。


「………あっ」


運動場の真ん中まで来たとき、はたりと何かに気づいたように足をとめた。