するとパチッと彼は眼を開き、突然の入室者に目を向けた。
ばっちり目が合い、美羽は動揺した。
「あっあの………本、読みにきたの!」
口から出た出まかせを彼は信じてくれたようだ。
静かに頷き、また窓のほうへと顔を戻した。
ほっと息をつき、そして後悔する。
本なんて読みに来てないのに。
しかし言った言葉は戻らないので、美羽はうそをつき続けることにした。
「最近、部活に行ってないな………」
文芸部部長でありながらも部活に行かないとはどういうことか。
文芸部は幽霊部員が多いので、部長がいかなくてもしっかり者の副部長が少ない人数の中、指揮をとっていてくれてるから心配はないが。
作文の書き方についての本を探すことにした。


