ふるえる手で差し出された色紙をもらい、サクラは瀬田に突き付ける。
「おっ………お願いします」
瀬田は無言で頷き、その色紙を受け取った。
サラサラーと流れるようにポップな瀬田 奏を書き、サクラに戻した。
その間約5秒。
完璧に慣れている仕草だった。
サクラは歓喜の声をあげ、満足そうに去って行った。
仲間たちは笑顔でそのあとを追っていった。
「………作詞家でもサイン求められるんだ」
ポツリと呟きを洩らした。
優衣が帰ってきて
「なんかあったの?他のクラスの女子が大事そうに色紙抱えてたけど」
「あー………まあ」
そこで休み時間を終えるチャイムが鳴った。


