「奏って………」
美羽は前髪と混ざった後ろ髪を分けた。
呼び捨てかよ、と不機嫌に思った美羽に気づくことなく、サクラとその取り巻きたちは大声を上げながら斜め後ろで半分寝ている瀬田に話しかけた。
その手口はあまりにも自然で。
「あの………新曲聴きました!」
あっそっか………あんなんでいいんだ。
美羽は虚を貫かれた。
『heaven』ってどういう意味?とかでもよかったんだ。
その人が得意とするジャンルの話題を持ちかけたら大抵は話がはずむ。
そして徐々にこちらのペースへと引き込んでいけばよかったんだ。
先を越された美羽は悔しさをこめて下くちびるをかんだ。


