社会科の教師、緒川は春の海みたいに穏やかに教卓の前に立った。


ほのぼの~としている雰囲気は、周りのものすべてをほんわかさせてしまうほど。


黒板にゆっくり重要語句を書いている緒川が生徒を見回すと、冬の海のような冷たい視線をかちあった。


「………ひっ!?」


その子の目は冬から夏へと変わり、ギラギラと嫌らしいほど照りつける太陽のごとく熱をもった。


怒りを燃料として燃えている炎が、その子の背から燃え上がった。


「?先生どうしたんっすか」


異変に気付いた男子生徒が気遣うそぶりを見せる。


「いっいやなんでもないよあっはっは………」


その子の視線から逃げるように緒川は黒板に向き直った。