「新曲、『heaven』ってすごくいい詩じゃない?素直な心の内を明かした男性の思いをテーマにしてるらしいけどー」
こぶしを作り熱く解説しだした優衣から視線を外し、斜め後ろの瀬田の席を眺める。
授業中、鉛筆とルーズリーフだけを用いて教科書すら開けず、何かをカリカリ書いているのをよく見かける。というかその様子しか見かけない。
チラリと振り返るとばったり目があうこともしばしば。
大きく見開かれたような眼はただ大きいだけなのかは知らないが、美羽を見つめているのではなく何かもっと大きなものを見つめているように思える。
10秒間ほど虚空を見つめた後、すぐ彼は手元の紙にサラサラと何かを書き込んでいる。
はたから見れば勉強しているように見えなくもないが、全員と頭を下げるタイミングが大いにずれているのでやはりおかしい。
いつもマイペースな彼は、長い脚を組み、窓のほうをじっと眺めている。
絵画のような光景に見とれてしまい、重要な語句を聞き洩らしてしまったこともある。


