視線の先には国語の赤い教科書を出さず、窓枠に肘を立てたそがれている瀬田の姿。 いつも通りの大きく見開かれた瞳は、窓の外を何を見ているのだろうか。 題材が決まった。 美羽は前に向き直り、再び気合いをシャーペンに込める。 「………です・ます・は丁寧語で………」 教師の言葉すら耳に入らぬほど、美羽は熱中して書き続けた。 その後ろからは、じぃっと夢中になっている美羽を無表情で眺める瀬田はいたが、美羽は気づくこともなく右手を黒く汚し続けた。