『でもあの曲は前も言った通り』
―――キミだけに―――
と言ってくれた時を思い出し慌てて頭を振った。
ころころ表情が変わる美羽に、優衣は不思議そうに首をひねった。
「………あっ!次音楽じゃない?」
「瀬田君は先行って新作ピアノで弾いてるって。ファンに頼まれて」
「………妬いてないの?」
「ん?べっつにー」
バタバタと二人は肩を並べて教室から飛び出した。
薄紅のCDケース内の歌詞が風ではためいた。
やがて風が収まり、CDのタイトルが顔をのぞかせた。
『Loving Expression』
*END*