「美羽っ!聞いた!?瀬田君の新曲!」


興奮しすぎて鼻から荒い息をふきだしている優衣が話しかけてきた。


「えっあっうん。まっまぁうん」


一番最初に聞いたとはなぜか言いにくかった。


「すっごくいいよねっ!やばいんですけど!」


優衣は薄紅のCDケースを突きつけてきた。美羽は苦笑しながらそれを見るだけ見た。


発売はしないと言っていたあの曲は堺さんの強引な説得(脅し)によって発売された。


「こんなにいい曲!発売しなければだめよだめだめ!」


駄々っ子のようにこねて、瀬田を困らせまくった挙句、彼の許可なくテレビ局に走って行った。


ごめん、としおらしく謝る瀬田の姿が目に浮かんだ。


ぷふっと静かに思い出し笑いをする。