美羽は不満そうに唇を尖らせ、瀬田をしげしげと眺めた。 いつもと何ら変わりのないポーカーフェイスだったが、焦りが少し表れているように思えた。 きっと気のせいだろうが。 「帰ろう」 ごまかすようにそう立ち上がり、彼はすたこらと教室から出て行った。 「あっ待ってよっ!」 おいてけぼりをくらった美羽は急いで彼の後を追った。 瀬田が持ち帰り忘れた鉛筆が、ころりと転がった。