やさぐれた僕の心を一言でとかした彼女に素直に尊敬の念を送ろう。 僕の心はもともと凍ってなんかいなかった。 彼女に会うまで凍らせていただけだったのかもしれない。 「瀬田君。もっとわかりあおうよ。もっともっと楽しく時間を過ごしてお互いを知って、完璧に外を歩けるようになるよ」 だから、と彼女はまつ毛を伏せた。 「だから泣かないで」 瀬田は自分の頬を撫でた。 枯れた体にしみわたるような液体だった。