「喜多川さん。僕は弱い人間だ」
瀬田は言った。
「世界で最も弱く低俗で人とのかかわりを避ける、最弱の人間だ」
「そんなこと、ないよ」
美羽は反論したが、よわよわしい声だった。
「美しい羽根に、惹かれたモグラだ」
彼は少々臭い言い回しをした。
「朝日に輝き、あんな風に輝きたいという思いを持つだけで土の中から出てこようとしないモグラだ。そこを恐れ、自分はあんな風にはなれないと片隅で思う」
実行もしないのに新しい世界に怯え、目の前ですくむただの臆病な人間だ。
瀬田は太陽色の髪を後ろになでつけた。
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