彼はヘッドフォンをとった。


音楽は何もかけていない。


人と人が会話を交わす音を、少しでも遮断したかった。


言葉は詩と同じだ。


読み手が違えば言葉の意味も違ってくる。


人々の交わす会話は無意味で残酷で耳をふさぎたくなるような。そんな感じだった。


だけど彼女と出会って、取ってみようかと思えた。


美羽の言葉によどみや身にこたえるような心は一切なかった。


一目見たときから彼女はそういうものに無関係なんだろう、となぜか確信もしていた。


だからこそ心を許せた。


本当のことを、話せた。