「瀬田君のことを嫌う人なんているわけないじゃんっ!」
「………君は優しすぎる。優しすぎるがゆえにわからない」
瀬田は目を細め、言い放った。
「僕は大人の世界で生きてきた。分かったことは」
彼は人差指と親指を立て、自分のこめかみに人差指を当てた。
「人というのは、状況に応じて人を殺せるということを」
殺す、彼の口からは決して出まいと思っていた言葉だった。
人を殺すというのは、命をとるという意味ではないだろう。
見捨て、自分の心の中から消すという意味。その人の中から自分が消えるということは死に近い。
「僕も、何度も押さえつけられた」
それは彼の才能のことを言っているのだろうか。


