「は?」
「君を困らせた。今思えば嫌いだなんて心やさしい君が言えるわけがない」
何気に褒められた美羽が一歩後ろに下がるのを確認し
「返事はいらない。答えがわかっている問いを解いてもつまらないし、時間の無駄だ」
じゃあ、とカバンを肩にかけ瀬田は出入り口に向かった。
さっきまで高ぶっていた心境は、氷河期を迎えている。
どういうこと?なんで帰っちゃうの?
まだ何にも言ってないのに、決めつけて逃げるの?
「待ってよっ!」
美羽はわれ知らず怒鳴っていた。
ねじが切れたブリキのおもちゃのように彼は唐突に止まった。


