それは今かなったのか叶っていないのか。
確かめるのもおっくうだったが、確かめる必要もないと確信を持っていた。
美羽が駆け足で濡れたハンカチを持ってきた。
滴り落ちるしずくを拭おうともせず、彼女は上半身を起こしている夏目の唇の端にそれをそっとあてた。
「無茶ばっかして………」
彼女の口調は仕方のない兄へ向けられるものとよく似ていた。
「おおすまねぇな」
夏目はもう照れたりせず、美羽の好意をありがたく受け入れた。
「美羽」
夏目は彼女の名を呼んだ。
「なに?」
不思議そうに額にしわを寄せる美羽。
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