「それは君の偏見だ」


竹を割ったような声音で皮肉に皮肉をはき返した。


「確かに作詞家は主にペンしか握らない。だがそれゆえにペンを握るほうの利き手の皮は厚くなる。圧力も同等」


キョトンと夏目は目を丸くした。


「………おい。今のはギャグか?」


「………君が勝手にそう解釈するならそれでもいいが」


ぶっすりと彼はそっぽを向いた。


その仕草があまりにもこの男の動作とは思えなくて、つい夏目は吹き出した。


「笑うな。何が面白い」


気分を悪くしたように瀬田は目を細くした。


それがさらに拍車をかけ、彼の笑いを後押しする。瀬田はもう何も言わず苦虫をかみつぶしたような顔で横を眺めていた。