「さっ佐東さん!てめぇ!」


佐東さんというのはボスのことか。子分の一人が額に汗をかきながら瀬田に怒鳴った。


あっさりやられたボスをちら見して、彼はポケットの中をまさぐり始めた。


全員の視線が彼のポケットに突っこまれた手に集中する。


瀬田は無言で携帯を開き、彼らに見せつけた。


それを目に捉えた瞬間、彼らの顔色が真っ青になった。


この瞬間をねらったように遠方からファンファンファン!と腹に響くような機械音が聞こえてきた。


クモの巣を蹴散らすように逃げていく蜘蛛の子たち。


ボスは目を覚まし、無感動に見下ろしてくる瀬田に悲鳴を上げずるずると巨体を引きずりながら去って行った。