美羽はすくりと立ち上がった。夏目はそれを信じられないといったように凝視した。
「おい美羽!そんな阿呆にかまうんじゃねぇ!」
夏目は苦しげに呻きを漏らした。さっきのキックが変な所にあたったのだろう。
立ち上がったのはいいが、歩む寄る勇気は彼女にはなかった。
ボスが含み笑いを保ちながら美羽の肩にごつごつした手を置いた。美羽の肩がぶるぶる恐怖で震えている。
「美羽っ!」
夏目が苦し紛れに叫んだ。
こんなに近くにいるのに、助けることもできない。そのことが夏目をイラつかせていた。
気力で立ち上がろうとするが、どうしても膝に力が入らない。
彼は腑甲斐なさに切歯扼腕する。
美羽の恐怖が最高潮に達したのと同時にボスの肩に白い手がおかれた。


