「………喜多川さん」


「はっ!?はっはいはい!」


別の異空間へ飛びかけていた美羽を、瀬田は連れ戻した。


「早く」


早く斬ってくれ、と言っているように聞こえた。


「あっその私は………」


美羽が邪心を追い払い、思いを告げようとすると、教室前の廊下が騒がしくなった。二人分の足音がどんどん近付いてくる。


「………なぁ!マジでやべぇって!」


「だから今先生に言いにいってんだろ!」


焦りと緊迫感が声音で伝わってきた。


声で男子二人組だと認識できた。


彼らは荒い息をこの教室の前で整えている。


瀬田と美羽は思わずそっちに首を回した。