優衣かと思ったが、寄りかかった腕の硬さは男子のものだった。


男子は1人しかいないので、常識的に瀬田が行った行動だと即座に理解する。


「あっあのどうしたの………」


美羽が理由を尋ねたのと同時に、どう考えても交通法規を守っていないスピードで細い路地を赤いムーブが駆けて行った。


優衣は瀬田の後ろだったので無事だったが、道路のど真ん中を歩いていた美羽をひきつけてくれなければ今頃宙を舞い終わっているころだろう。


排気ガスをまきちらしながら小さくなっていくムーブを確認し、瀬田はパッと自分のものより細い腕を離した。


「あっありがとう」


「………」


そのまま何事もなかったかのように先を行く瀬田の背を、やはり二人は茫然と見送った。