夏目は物悲しい思いを持ったまま町をぶらついていた。


どうやら自分の思いは美羽には通じなかったようだ。


人を傷つけるほど愛してるというのに、その傷つけた男を愛すというのか。


とてもじゃないがやりきれない。


サッカー部にまで入り、喧嘩も止めた。


それで彼女に近づける男になれたと思ったのに、逆の坂道を転がり落ちてきただけだったのか。


むしろ逆効果だったとも言えるのではないか、と今まで信じてきたものが音を立てて崩れ落ちる音がする。


力強く握りこぶしを握った。


久々に人間を殴りつけたせいかずきずきと虫歯が手に移転したかのような痛みを覚えた。


美羽はこんな暴力人間をすくってくれたのだ。


人を傷つけることしか能のなかった自分に生きる道を教えてくれた。


それが美羽に相応するような男になる、という目標だったのに。


それは美羽の手によって再び取り上げられた。自分が悪いとはわかっていてもやるせなさは抑えきれない。