わけがわからぬまま夏目がビンタされ、瀬田は美羽に引っ張られて中庭を出た。 一回だけ振り返ってみると、じっと己の拳を見つめている夏目の姿があった。 その寂しげな瞳に、なぜかいたたまれなくなった。 ぐいぐいと好奇の視線と話し声に見送られ、校門を後にし、適当な頃あいで瀬田は美羽に声をかけた。 「………どこ行くの?」 その声に我に戻ったようだ。 ぴたりと荒い歩き方をやめ、彼女はゆっくり振り返った。 彼女もまた、彼と同じ瞳をしていた。