「美羽がお前を選んだなんて信じねぇ………!」
はて。何を選んだというのだろうか。
「俺は認めねぇぞ!お前が俺以上の男じゃない限り………!」
己に言い聞かせるように夏目は唸った。
ぶるぶると寒いのか瞳がうるんでいる。
瞳の奥を覗いてみると、言葉では表しきれない感情たちがうごめいていた。
嫉妬憎悪恐怖焦り愛憎………。見ているだけで泣きそうなほど切ない思い。
「………認めねぇ!」
もう一度怒鳴り、再び彼は右腕を振り上げた。
目を閉じて耐えようかと思っていると、彼女の声が聞こえた。
澄んだ声音に痛みを忘れた。


