「瀬田君!?大丈夫?」


「………まぁ」


殴られた跡とは思えないほどの鉄火面で瀬田は答えた。


唇が切れているだけでほかに目立った外傷はないようだ。頬にあざができている。


無事を確認してホッとしたのもつかの間、彼女はすくっと立ち上がり夏目の前に立ちふさがった。


「………美羽」


彼が言い訳がましく美羽の名を呼んだのと同時に乾いた破裂音が中庭に響いた。


予想だにしない平手打ちに夏目は目を剥いた。


美羽はうつむいたまま低く彼に言う。


「………夏目。不良から足洗ったって言ったよね?なのになんで瀬田君を殴ったの?何にも悪いことしてない人を、なんで殴ったの?」


信じていたものに裏切られたような声音だった。